「さて、ファーストキャピタル・リバーを渡りきりましたが…… この目の前をまっすぐ通っている道をイロハストリートと申しまして、ガイアポリスの中央、ワールドアクシス・パークまで続いております。ガイアポリスの都市計画では各地の文化を反映させていまして、この通りは特にシノニア自治区ニッポン地区の文化を参考にしているんですよん」
「イロハっていうのは、ニッポン地区の古来の言語で、今でいうABCみたいな意味の言葉なんでしょ」
「そうです、そうです。よくご存じで。日本語で使われていた文字の一つで、その文字の総称で書くことの事始めになることから、物事の初歩を意味することもあったそうで。ニッポン地区の文化は俺も調べたことあるんだけど、4つも文字の種類を使い分けてたって話だから、驚きだよねえ」
「その中にシノニアの代表的な表意文字の漢字が含まれているんだから、文字を覚えるだけでどれだけ労力をかけていたのかって感心するわ。あり得ないほど多いもんねえ、チャイニーズ・キャラクターって……」
「あっはっは。確かに。文法自体はたいしたことないのに、文字がネックなんだよねえ。そうそう、ニッポン地区は、土地柄かなかなかユニークなので観光に行くのも面白いらしいですよ」
「でもあそこ、太平洋側の弧状列島だから、水害と地震災害が多いんじゃなかったっけ?」
「比較的多い、という程度らしいですけどね。列島だから…… ええと、貿易港のオタル市、核融合発電所のトーキョー市、工業都市のフクオカシティが有名ですね」
「あれ? ソール市は……」
「あー、そこも精密機械が有名ですが、そっちは大陸東部の半島になりますね。さて、もうガイア歴も600年を過ぎまして、このイロハストリートも当時の面影がほとんどなくなってしまってます」
「そうね。建物は古めかしさがあるけど、せいぜい下町ってところかな。シノニアを連想するものがないもの」
「何せここはガイアポリスで2番目に賑わってるから、新しい商店も多いんだよねえ。その中でも当時から続いている店なんかは、オリエンタルな雰囲気があっていいんですよ。いろは茶房とか。他にも飲食店関係が多いから、外食するときには多く訪れることになるでしょうな。さて、ちょっとここを左に曲がりますよー」