FROTY COFFEE * OTS2

女神の大橋

「では、ヴィーナスブリッジを北詰めから南詰めへ渡りますよー。ま、ガイアポリスの治安が悪いということもありまして、無人ではありますがゲートが設けられています」

「このあたりでは一番大きな橋よね。ファーストキャピタル・リバーの河口も近いし」

「ガイアポリスとネオ・ガイアポリスを隔てているのも、この河ですしね」

「ところで、確かこの橋、衛星のヴィーナスから名前をもらったのよね」

「らしいんだけどね。メモとるの忘れたとかで、確たる資料が手元にないとか、もしかして思い込みかもとか、とある人が画面の前で潰れてる状態でございます」

「はあ……」

「言うことにゃ、作者様の二月ほづみ さまのブログ FEBLOG で、衛星ヴィーナスに言及されていた記事に書いてあったのかもしれないとのことなので、昔からのファンかつ記憶力のよい方がいましたら思い出してみてください」

「……と、とりあえずその話は横へ」

「ごめんなさい。さっきのはオフレコということで。では衛星ヴィーナスとヴィーナス法の話でもしましょうか」

「Ω計画の話だよね。ちょっと待って…… 衛星の打ち上げも法律の制定も、今から約400年前、ガイア暦206年の出来事ね」

「うんうん。そもそもヴィーナス法なんて呼ぶのは、その年にヴィーナスが打ち上げられたことに由来するわけでして。正式名称はご存知?」

「知らないけど、ネットワークという言葉は入っていそう」

「ご明察。『次世代通信ネットワーク構築に関する通信事業者等の義務に関する連邦法』、です。第4世代インターネットからΩ-NETへ移行させるための法律で、政策の性質上、一般市民の利用機器購入を後押しする連邦補助金制度まで含んでました」

「……それにしても、直接この橋とはかかわりのない話だよね」

「あっはっは。ごめんなさい、計画倒れです。ヴィーナスブリッジというと、あとはゲートのセキュリティがいまいちってところでしょうか」

「いまいちなの?」

「結局、無人ですしね。市民ID持ってない人もたくさん通りますし、特に手練れのハッカーにはどれだけ効果あるのやら……」

「そういうものなの?」

「モノがオンラインですから。ま、ガイアポリスに対して威圧感を示していると思いますし、ネオポリスの治安には貢献してるんじゃないでしょうか。ハッカー以外なら無能と言うほどではないですよ」