「まあ、ざっくりとゴーグルの説明もしましたんで、続いて通信する際の手続きやら注意事項やらをお話しましょうか」
「お願いします」
「ちょっと話をしたけれども、1-bitダイビングでデータホストの中へ入るには、まずはQUEEN SYSTEMに適正な通信だと許可してもらわなきゃいけません。そこでブレインポケットの情報と、アクティブメモリの情報とをQUEEN SYSTEMに送るんですが、それ以外にも自分が何者かを知らせなきゃなりません。というわけで、ユーザ登録しちゃいましょー」
「あ、はい」
「Ω-NETでは本名でなくて適当に作ったidで通信しますので、それも登録してくださいな。あとは本名と脳波パターンも一緒に登録すればOKです」
「……えーっと。やってみたんだけど、これであってるのかしら」
「ちょっと見せてくださいねー。うん。大丈夫大丈夫、よくできてますよん」
「えっと、どうも」
「さて、ここで後回しにしていたことをお話してしまいましょう。ゴーグルをいろいろいじってたときにお話ししていたHONETについてです。ブレインポケットの説明をしたときにちょろっと説明したけど、覚えてるかな? これはなんぞやというお話ですが、連邦通信法の不正利用を規定する、連邦総務省令Ω-NET公正利用規約、の、通称がHONET規約。QUEEN SYSTEMによって運用されてて、違反すると直接制裁されちゃうこともあります。ダイバーのみなさんはこれを女王の針と呼んで恐れているわけです。まああとは、逮捕されるとかもありますね」
「……そう」
「あ。あと、仕事受ける気がなくてもギルドには登録しといてね。じゃないと、不正利用とみなされちゃうことがあるから」
「あ、はい…… って、あの、ギルドっていったい……」
「まー、政治的にいろいろあるみたいですよん? さてさて。さっきもういろいろ話してしまいましたが、潜る際の注意事項をば。まずはゴーグルのスペックと自分のステータスを知っておくこと。ブレインポケットやアクティブメモリの中身を確認しておくこと。ゴーグルがユーザ登録されているかどうか確認しておくこと。……まあ、してなかったらQUEENに入力求められるってだけなんだけどね。それから絶対に誰かにサポーターについてもらうこと。一人で全部やろうとしたらぶっ倒れますよー。あとはギルドに登録しておくこと。自分の力量にあったホストに潜ること、それより高レベルのホストには絶対に潜らないこと。このあたりの判断がつかなかったら、ギルドで依頼を見てみるといいよ。どのレベルまでなら任せてもらえるのか分かりますので。それから、潜ったあとは、常にブレインポケットの状態に気を配ること。慎重に動くこと。ちょっとでもまずいなあと思ったらホストから脱出して通信を終了すること。とにかく、無茶をしないこと。そもそも1-bitダイビングなんて違法スレスレの技術なんだから、慎重に慎重を重ねて潜ってくださいね」
「はい」
「何度でも言うけど、本当に慎重にねー。連邦通信法第418条第11項で定められてるQUEENによる制裁並びに強制排除、さっきも言ったけどこの通称女王の針は本当に怖いというか、発令されたらまず殺されちゃうと思ってくださいな。無茶は御法度です。あとは、まあ、潜ってる最中は体の感覚全部もってかれますんで、安全な場所でやってください。それと、潜ってるときの感覚はかなり独特で、慣れないと酔いますので気を付けて。気持ち悪かったら即脱出、それもできないならサポーターの人に頼んで強制終了しちゃってください」
「……強制終了って痛いって聞いたんだけど」
「あー、すっごく頭痛くなります。無理矢理だから、アクティブメモリのデータ半分くらいふっとんじゃいますし、1つしか持ってないデータはパァになります。プロテクトかかるごく一部のデータはちゃんと保護されるけどね。俺と組むときは一応やりませんよ。その前に危なさそうなら止めますし。もしカロネ嬢が自力で戻れそうになければ、そのときはサポーターのスキルっていう、まあ、とにかくサポーター側の処理で安全に脱出させるだけの技術はありますんで。強制終了も1回くらい経験しといたほうがいいと思いますけどねー」
「さ、最初くらいはお手柔らかに……」
「あっはっは。大丈夫大丈夫。怖がらなくても、無茶はさせませんって」